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All Life on Earth Could Have Come From Alien Zombies
WIRED 2010.11.10


地球のすべての生命は地球外のゾンビたちかもしれない



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地球上の生命は、地球外のウイルスの残骸から成長したものなのかもしれない。

そのウイルスは死んではいるけれども、新しい生命を生み出すのに十分な情報を含んでいる。

以前より、生命は宇宙から地球にやって来たと考える科学者たちは大勢いた。パンスペルミア説と呼ばれている概念は、実に1870年代から存在しており、今から 140年前のその頃、ケルヴィン卿は、微生物が彗星か小惑星に乗って地球にやってくる可能性を示唆した。

他のパンスペルミア説提唱者たちは、微細な有機体が、塵の粒子に閉じ込められることによって、宇宙空間を横切ることができると推測した。そして、星の放射線によるわずかな圧力によって、ひとつの恒星系から他の恒星系へと移動していくことができると提言した。

しかし、多くの宇宙生物学者は、その放射線自体がデリケートな微生物にとっては死を意味すると考えている。

カリフォルニアにある SETI 研究所の宇宙生物学者、ロッコ・マンチネッリ氏は、「古典的な感覚で考えれば、放射能の存在はパンスペルミア説を成り立たせない」と言う。

しかし、カナダのハーズバーグ天文学研究所の天文学者ポール・ウェッソン氏は、「その古典的な感覚は間違っていることになるかもしれない」と言う。

ウェッソン氏は、学術雑誌スペース・サイエンス・レビューの最新刊において、たとえ、その微生物が地球到達時に死んでいたとしても、その断片に残る情報が、地球で生命の惹起をもたらすかもしれないと言う。彼はこれを、ネクロパンスペルミア( necropanspermia =死のパンスペルミア説)と呼ぶ。

「大多数の有機体は死んだ状態で天の川まで到達する。しかし、そこから復活することは可能かもしれない」と、ウェッソン氏は書いている。

問題の鍵は、どれくらいの遺伝情報が宇宙の中で残っているのかという点についてあるとウェッソン氏は言う。

生命体の遺伝情報は DNA のヌクレオチド配列でエンコードされている。この情報は、コンピュータ処理と同様にビットで測ることができる。

たとえば、大腸菌のようなバクテリアは、その DNA におよそ 600万ビットの情報を運ぶ。

これまで行われてきたランダムな化学プロセスではこうはいかず、単純な細胞さえ走らせるような情報も十分に生じさせることはできなかった。ランダムに分子をシャッフルした場合、5億年以上にわたって続けても 194ビットの情報が生じるだけとウェッソン氏は言う。

このパラドックスに対して考えられることのひとつとして、地球の生命は、すでに大きな遺伝情報を持つ既存の生体分子によって、遺伝を接種されたという考えだ。たとえ、生体自身は死んでいても、大きな遺伝情報は宇宙空間を生き伸びているということだ。

ただ、ウェッソン氏は、その遺伝情報がどのように新しい健康な生き物へと変換していくのかについては曖昧になる。

「パンスペルミア説では、どの意見においても、宇宙の実体が地球に運ばれた後にどのように我々が生命と考えている物へとなっていくのかということに関しては、知識の穴に苦しめられることになるのだ」とウェッソン氏は書く。

ウェッソン氏は、すべての情報を運んできたものとして、ウイルスをよい例として挙げる。

ウイルスは基本的に、タンパク質と、時には脂肪の被膜に入っている遺伝物質の要素からなる。ウイルスは、およそ 100,000ビットの遺伝情報を持っており、従来の細胞から独自に進化したものかもしれない。ウイルスは、他の微粒子や特定の遺伝情報のアシストを必要とすることなく、タンパク質の粒子から自分自身を集めるようだ。

宇宙の生命の研究をしているカール・セーガン・センターのディレクター、デヴィッド・モリッソン氏はこう語る。

「非常に推論的ではあるけれど、興味深い意見だ。重大な問題は、核酸の中の壊れた網の中にある情報が、他の世界での生命のテンプレートとして用いられることができるのかどうかだ。実際、我々は地球で生命が始まったブロセスをほとんど何も知らない。だから、どの意見でもそれが事実だとは言えないのだ」。

しかし、今回の研究に参加していない宇宙生物学者のロッコ・マンチネッリ氏は、この意見を買わない。

「一度あなたが死ねば、あなたは死んでいるのだ」と彼は言う。

マンチネッリ氏は、宇宙空間で細胞やウイルスを殺すことができる要素として、放射能の他にもあると言う。カリウムのような要素は宇宙空間を横切る何百万年の間で、それらを腐敗させ、仮に生命体が放射線から保護されたとしても、それにより別のダメージが与えられる。

「宇宙空間にはすべての核酸を切り刻むのに十分な放射線がある。生命体が生き残る方法がないのだ」と彼は言う。

「他の問題としては、水素とヒドロキシ基を含む分子は、細胞から切り離されると水を形成するために結合するという点がある。このデシケーター(乾燥)と言われるプロセスで、カラカラに乾き上がってしまう。それはタンパク質の特性を奪うのだ。そして、ズタズタにして再結合するので、もはや何の機能もそこにはない」と彼は言う。