創造神ヌーワへ捧げる地球の音楽

再起動した地球の過去の音楽たち (1) Rock It の登場




現在の大衆音楽に与えられる中で最も権威があると言われるアメリカのグラミー賞。

そして、実際に地球の大衆音楽の方向性を一変させた「地球的イベント」が起きたのも、確かにそのグラミー賞受賞式でのことでした。

1983年。第26回グラミー賞の「ベスト・R&B・インストゥルメンタル・パフォーマンス賞」に輝いた曲。
それがハービー・ハンコック( Herbie Hancock )の RockIt(ロック・イット) でした。

これはその第26回グラミー賞の受賞式でのコンサートです。
全米で「何百万人もの音楽好きな少年少女たち」がこの様子を見ていました。





この曲を作ったハービー・ハンコック自身は今でもあまり気づいていないと思いますが、この曲とこの受賞コンサートが「歴史に埋もれた何万曲もの古い音楽に再度、命を吹き込むキッカケ」となりました。

このあたりの経緯は、2002年の音楽ドキュメンタリー映画「スクラッチ」をぜひご覧になってほしいと思います。

この映画は、ヒップホップの歴史的なドキュメンタリーと思われがちなのですが、実際には「20世紀の音楽再生への道のり」を記録したもので、私が生まれてから見た(あらゆる種類の)ドキュメンタリー映画の中で最も感動したもののひとつです。

過去の歴史の中に埋もれてしまっていた音楽たちが「スクラッチの登場」と「レコードの発掘」によって、次々と光を取り戻していく様子が描かれます。

そして、その「スクラッチ」。

これはこのロックイットの時にはすでに存在していたのですが、この 1983年のグラミー賞受賞コンサートで、多くのアメリカ人の若者たちは「生まれて初めてスクラッチの光景を目撃した」のです。

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▲ ロックイットのスクラッチを担当したグランミキサーDXT 。


映画スクラッチの中では多くの DJ たちが、「どうしてスクラッチに興味を持ったか」という質問に、 1983年のグラミー賞受賞コンサートでのロック・イットと、そして、その時にスクラッチを担当したグランミキサーDXT の名を上げています。 映画の中のシーンの一部です。

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▲ DJ ファウスト


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▲ ミックスマスター・マイク


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▲ カット・ケミスト


これは、ただの DJ とヒップホップの誕生という意味だけの話ではありません

その後 十数年に渡って全米中で沸き起こったDJ とスクラッチブームにより、「埋もれていた過去の音楽たちが次々と復活していった」のです。

つまり、「ロックイットの登場は、この世の音楽の再生の手助けをした非常に偉大なイベント」のひとつだったと私は思います。「売れる売れない」ということばかりクローズアップされていた資本主義下での大衆音楽。
しかし、売れようが売れまいが、「実はいい曲はいい曲なのだ」と。

最初は全米で、そして次第に全世界で、「過去の音楽の壮絶な掘り起こし」が始まったのです。

ここまでくれば地球の音楽はもう大丈夫でした。

あとはどんな放っておいても、大衆音楽は発展するだけです。

クラブで、レコードで、過去に「一度死んだ音楽たち」が生き生きと再生していく。

ここまで来れば、もう創造神ヌーワの役割は大部分終わっていたと思います。
あとは、生命の持つ特性である「指数関数的な」爆発的な音楽の増殖の結果を見ていくだけということになります。

その後、音楽が MP3になり電磁となり、インターネットの上で異常な勢いで増殖していく様子を私たちは見ていますが、これも、この時の「過去の音楽の再生」があったからこその到達点(しかし、まだ中間点)だと私は思います。





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