ささやきがロックに融合した奇跡の日（１）
もう20年くらい前になりますが、1990年頃、私が最もよく聞いていた音楽のひとつが、My Bloody Valentine （マイ・ブラディ・バレンタイン）の下の「Feed Me With Your Kiss」という曲でした。下の映像はそのプロモです。
My Bloody Valentine / Feed Me With Your Kiss （1990年）
多分、シングルかミニアルバムかだと思いますが、友人が「こんなバンドが出たらしいよ」と、４曲入りのレコードをカセットに録音してくれて、そのどれもがいい曲なんですが、この Feed Me With Your Kiss を聴いた時に、言いようのしれない一種の「恍惚感」のようなものを感じました。
その恍惚感の理由はわからなかったですが、当時はカセットのウォークマンの時代で、この曲の入ったテープを入れて持ち歩き、それこそ何百回聴いたかわからないくらい毎日この曲を聴いていました。
そして、最近になって気づいたこと・・・。
クレアなひとときの 人類の未来（５）：神話が教えてくれる「女性」 という記事などを書いている中で、「創造神ヌーワ」が孤独の中でどのように暮らしていたかということを想像する中で、私がこの Feed Me With Your Kiss を聴いた時にどうしてあれだけの恍惚感と幸福感を感じたのか、少しわかったのです。
この曲は、ロックがこの世に登場して以来、初めて、「女性の声の表現の本質」がロックの演奏の上に乗った曲だったことに最近気づいたのです。最近というか、昨晩のことなんですが、外を散歩していてふと気づき、なんとなく異常に感動してしまいました。
長くなるかもしれないですが、書いてみようと思います。
ちなみに、当たり前ですが、マイ・ブラディ・バレンタインのメンバー自身はそんなことには少しも気づいていなかったはずで、だからこそ、「マイ・ブラディ・バレンタインというバンドはこの世の奇跡」だと思います。
意図しないところで生まれた奇跡。
1990年という年はすでにロックの終焉に向かう最後の時代でした。
その時に大衆音楽の世界に生まれた奇跡。
リンク・レイが生み出したハードロックとパンクの世界の最後にギリギリで追いついた奇跡。
この話は、「そもそも創造神ヌーワは人類創造以前、そして、人類創造時に何をしていたと思われるか」ということから推察できる、「人類の女性の本質は何か」という問題と、「歴史上でのロック音楽と女性ボーカルの関わりはどのようなものであったか」という矛盾を解くところから始まります。
もうこの時点でも長くて、どうも一回では終わりそうもないですので、何度かにわけるかもしれません。
今回はその「人類の創造神ヌーワは人類創造のときに何をしていたと思われるか」ということを書いておきます。
まず、前提として、
・ヌーワは（何万年も何億年も）孤独だった
・周囲に人がいないので会話をする必要もなく、またできなかった
・人がいないので人目を気にする必要はなかった
・つまり、「規則」も「ルール」も必要なかった
・でも、声は出せたし、出したかった
・周囲に人がいないので会話をする必要もなく、またできなかった
・人がいないので人目を気にする必要はなかった
・つまり、「規則」も「ルール」も必要なかった
・でも、声は出せたし、出したかった
ということがあったとします。
その場合、泥人形から人類を作りだそうとしていたヌーワは、その目的を「この泥人形の中から、自分の孤独を慰めてくれる存在が出るかも知れない」という期待を込めていたと思います。
なので、彼女は泥人形に話しかける。
周囲に人はいません。
そういう時、人はどのように「無生物」に話しかけるかということです。
ロックのようにシャウトするでしょうか。
メジャーコンサートでの有名人のように激しく意志をアピールするでしょうか。
ハードコアパンクのように喚き散らすでしょうか。
私は多分「しない」と思います。
彼女がすることは多分、「ただ、囁くこと」。
メロディの決まりがあるわけでも、タイミングに合わせてシャウトするわけでもない、「決まりのない囁き」。
ヌーワは何億年も「ささやき」続けていたと思います。
私はこれが女性の表現の本質だと今は考えています。
そして、これは様々な音楽の上で表現されてきました。
ポップソングやフォークソングの様々な部分で、この女性の本質は達成されてきました。
しかし、ロックはどうだったか。
特に、激しいノイズギターが大音量で鳴り響くパンク系ロックではどうだったか。
これが着想の出発点です。
いずれにしても、私はこのマイ・ブラディ・バレンタインの Feed Me With Your Kiss のプロモの中で歌うボーカルのビリンダ・ブッチャーさんのこの微笑をブロモで見た時に、20年前の「恍惚感」の理由がわかった気がしました。
人類の創造神であるヌーワが目指したのは怒りでもシャウトでもなく、あるいは大爆笑でもなく、この「ささやかな微笑のある生活」だったのだと感じます。
Feed Me With Your Kiss が収められたアルバムは iTunes から入手することができます。