私は20世紀のパンク少年だった


見境のない疾走の中で



前回の記事で、黒点数がもっとも増える頃、つまり太陽活動がもっとも活発になる頃、人々は、 「感情の高ぶりの中で、自己防衛の本能さえ失って暴走する」という特徴があると書きましたが、さて、この曲は黒点が最大数に近い頃だった1980年のスターリンの「サル」という曲です。



歌詞も書いておきましょう。

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  天皇がセンズリおぼえた
  動物園でセンズリおぼえた

  やりだしたら止まらない

  天皇がひとりでおぼえた
  センズリを
  天皇がセンズリおぼえた

  やりだしたら止まらない


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大変に無軌道な歌詞なわけですが、では、「スターリン」というバンドがその後も通して、そんなに過激で政治的な姿勢を貫いていたバンドだったかどうかというと、決してそんなことはないわけです。どちらかというと、遠藤ミチロウ氏は、現在まで一貫して真摯な音楽家というイメージのほうが強いかと思われます。

この頃(1980年頃)のスターリンは、ライブで、

・動物の肉や臓物を客席に投げつける
・豚の頭を客席に投げ込む
・ステージでマスターベーションをする

など数々の武勇伝がありました。


これらを「若気の至り」とするには、当時の遠藤ミチロウ氏はすでに30歳で、若くはなかったですし、話題作りとしても、「なぜそんな方向に」ということになるわけで、これは思うに、多分、本人たちが「自らの意志では止めることのできない無軌道の渦中にいた」というような気がします。

1980年頃の自分はまだ高校生でしたが、何となくあの時代の空気はわかります。 自分たちかが何かに引きずられて無軌道の渦中に入っていることはわかっていても、それ自体が楽しいことなのでやめる理由がない。

 > 感情の高ぶりの中で、自己防衛の本能さえ失って暴走する

この言葉を思い浮かばずにはいられないのです。

同じ、1980年頃、東京では、暗黒大陸じゃがたらのアケミがライブで生きたニワトリをかじったりしていた頃で、また、後のタコの山崎春美はステージ上で自分自身をナイフで切り刻んで、「自殺未遂ギグ」をおこなったり、多少後ですが、ハナタラシの山塚アイはステージで、チェーンソーの誤爆で自分の脚を切断寸前までに損傷させています。こんな感じで、日本各地のアンダーグラウンドシーンで「まるで意味のない無軌道」が展開され始めます。

akemi.jpg

▲ 口から血を噴き出しながらステージで暴れ回る、1980年頃のJAGATARA(当時、暗黒大陸じゃがたら)の故アケミ氏。場所は多分、東京吉祥寺にあったライブハウス「マイナー」。後の名ボーカリストもこの頃は血まみれになって叫んでいました。


重要なことは、「こんな無軌道な事件の数々はその後は起きていない」ということではないでしょうか。

ハードコアパンクのライブなどで喧嘩や暴力の末に誰かが怪我をしたり死んだりするというのは1983年頃からよくありましたが、それらは悲劇的ではあっても、「喧嘩で怪我をする」という道理にかなったもので、「無軌道」とは違います。無軌道とは「そんなことする必要がないのにやってしまうこと」のように思います。

無軌道が吹き荒れる。

多くは一過性のものですが、この時のパンクが私に与えたインパクトのように、ある人の一生の価値観の方向を決めてしまうこともあります。




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